不動産の売買取引をおこなうとき、売主から買主へ、現況のまま物件を引き渡すことは珍しくありません。
そのようなケースを「現状有姿渡し」といい、とくに既存住宅の売買で多く見られます。
この記事では「現状有姿渡し」にスポットを当て、売り手にも買い手にも役立つ基礎知識や、メリットとデメリットなどを解説します。
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「現状有姿渡し」とは?
「現状有姿(げんじょうゆうし)」とは、現況の状態、今のままの状態を意味します。
不動産売買における「現状有姿渡し」は、売主が売却する物件を補修やリフォーム、解体をせず、そのままの状態で買主へ引き渡すケースを指します。
現況の状態で引き渡されるため、「現状渡し」などといわれることもあります。
一般的に、不動産売買というと売主が瑕疵の部分を修理などして引き渡すイメージがあるかもしれませんね。
これは、たとえば壁紙がはがれていたり、壁にヒビが入っていたりなどの破損箇所があると、売却しにくいと考えられるからです。
とはいえ、実は、現状有姿渡しで売買されるケースも珍しくありません。
既存中古住宅の売買では、約6割が現状有姿渡しによる取引ともいわれています。
それでは、売主の場合、現状有姿渡しでの売買にするか、補修などの手をくわえて売るかはどのように判断するのが良いのでしょうか。
現状のままの引き渡しが向いている物件の特徴として、「築30年以上」であるかが、ひとつに目安にできます。
というのも、近年では不動産売買した後、買主が自分の理想的な住まいにするためにリノベーションをするケースも多いからです。
そのため、現況のままで物件を引き渡し、安く手に入ることが歓迎される場合もあるのです。
同時に売主にとっても、築古の物件を修理や補修するより、現況のまま手放すほうが得策になる場合もあります。
また古い物件だけなく、築10年以内の物件の場合にも検討してもよいでしょう。
築10年以内の物件は傷みが少なく、買い手に人気があり、売却価格が下落しにくいことは売主にとっても利点です。
現状有姿売買と「不適合責任」
次に、売買する当事者が知っておきたい、法的責任についてもチェックしておきましょう。
まず知っておきたいのが、不動産売買においての売主の告知義務です。
売主は物件の不具合なども含めて、知っていることをすべて伝える必要があります。
売却する売主は、ささいな不具合でも後々のトラブルを回避するために漏らさず不動産会社に伝え、買主と共有するようにしましょう。
また、売買するときには、「契約不適合責任」の理解も大切です。
契約不適合責任は、2020年の民法改正で、瑕疵担保責任に置き換わり施行されたものです。
契約不適合責任では、売主が把握しているかどうかに関わらず、契約内容と物件の内容が適合しない場合、買主から売主に追完請求ができます。
追完請求は、修繕などをして契約内容と適合させるよう求めることです。
解決されず、契約の目的が達成できないと減額請求などに進む可能性もあります。
現状有姿渡しの場合も、売主が契約不適合責任を免責されるということではありません。
たとえば、シロアリなどは調査をせず引き渡したとして、後から発見されたときに契約不適合責任について問われる可能性もあります。
契約書には、現状有姿渡しでの取引であることや、契約不適合責任についても特約や期間が記載されます。
売買の当事者は、これらの契約書の内容も確認しておきましょう。
残置物はどうなる?
現状有姿渡しをする際、不動産は現況のままで引き渡されるものの、残置物はどうなるのでしょうか。
一般的には、売主側で家具や家電、ゴミなどの残置物を処分します。
もし、売主が残置物を含めて引き渡したい場合などは、買主の同意を得て、契約書に記載するなどの対応が必要になります。
「現状有姿渡し」で売買するときのメリットを解説
現状有姿渡しの売買をする場合に、買主と売主がそれぞれ得られるメリットについて解説します。
買主のメリット
買主が現状有姿渡しで購入する場合の特徴は、「見た状態のまま入手できること」です。
変更されることなく不動産を取得できます。
そのため、入手したものがきれいな状態でなくても、「リフォームやリノベーションをする場合は手が加えやすい」という点もメリットになるでしょう。
また、改装などが必要になる場合には「価格も安くなる傾向」にあります。
購入価格がリーズナブルな傾向にあることは、買主にとって大きなメリットですね。
売主のメリット
現状有姿渡しには、売主側にも魅力となるメリットがあります。
ひとつは、「補修費用が必要ない」という点です。
建物の修繕をおこなって売却する場合には、当然ながらその分のコストがかかってきます。
かかった分の費用を売却価格に反映できれば、売主としても損はないのですが、現実的には相場を超えてしまうと売れにくくなってきます。
そうなると、費用の回収が難しいばかりか、場合によっては値下げを検討するケースもあります。
一方、現状有姿渡しによる売却であれば、修繕やリフォームをおこなうための費用を確保しておく必要や、売却価格に上乗せする必要がありません。
また、「手間がかからずに早く販売できる」ことも良い点です。
通常、補修工事をするなら、業者を探して見積もりや打ち合わせをし、工事をおこないます。
そういった手間がなく、工事に時間をとられて、思っていた売り出しのタイミングを逃すといったこともありません。
転勤などで早く売買したい場合でも、現状有姿渡しなら、不動産会社に相談して、タイムリーに販売活動ができるでしょう。
「現状有姿渡し」の売買でおさえておきたいデメリット
現状有姿渡しの売買にも、おさえておきたいデメリットがあるので、確認しておきましょう。
買主のデメリット
現状有姿渡しによる売買で不動産を入手した場合、物件によっては、設備などに手を加える必要がでてきます。
不具合があったときに、売主側への確認してもらうための連絡も必要になり、そういった手間もデメリットに感じる場合もあるでしょう。
しかし、既存住宅の売買では、売主の同意を得て、住宅診断のインスペクションを活用することもできます。
買主がインスペクションを希望することも可能なので、物件の状態をよく知って購入を検討することで、デメリットも回避しやすくなるでしょう。
売主のデメリット
売却するとき、売却価格が相場より安くなる傾向にあることがデメリットです。
既存住宅を売却する場合、同じエリアに同じような条件の中古物件が販売されているということは少なくありません。
買主からすると、価格が近い物件がいくつかあれば、物件の状態を比較するのも自然な流れです。
そうなったとき、現状有姿では価格を下げることに迫られる場合もあります。
しかし、この状況は必ずしもデメリットになるとは限らず、相場より安くすることで早期売却ができ、結果的に買い替えなどもスムーズに進む可能性があります。
また、契約不適合責任が免責されるということではないので、場合によっては住宅診断であるインスペクションなどもおこない、瑕疵や劣化の有無なども確認しておくことも大切です。
まとめ
「現状有姿渡し」とはどんな売買か、またメリットとデメリットについて解説しました。
売主にとっても、買主にとってもそれぞれに魅力や注意点がありますから、両面の理解をして検討することが大事です。
現状有姿渡しについてのご質問や、不動産売買のご希望も、お気軽にご相談ください。
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